昨今では、建設会社が宅建(宅地建物取引士)の資格を取ったり資格保持者を採用したりする例が増えてきました。ここでは、建設業において宅建士がどのように役立つか説明していきます

 

建設業と宅建業の業務範囲

建設業と宅建業はまったく異なるジャンルの業界であり、それぞれ以下のような特徴を持っています。

 

建設業の業務範囲

建設業とは、顧客から建設工事の依頼を受け業務を行う会社のことを指します。建設業者は建設業法に定められた許可を得る必要があります。

 

建設業法では建設業を29種類に分類しており、いずれも建設工程に関わる工事を取り扱います。たとえば、土木工事・屋根工事・電気工事などが代表的な例です。それぞれの分野に専門特化した会社もあれば、ゼネコンのように土木工事から完成までの過程をすべて請け負う総合建設会社もあるので、建設会社といっても大変幅広いことがわかるでしょう。

 

宅建業の業務範囲

宅建業とは、土地や建物といった不動産について賃貸契約を取り扱ったり売買契約に関わったりする会社を指します。宅建業者は国家資格である宅地建物取引士がいなければ営業することができません。

 

建設業界における宅建士のニーズ

不動産業を営むうえで宅建士は不可欠な存在です不動産に関する契約締結時には必ず重要事項説明と書面への記名押印が求められますが、この業務を行うことができるのは宅建士に限られるからです。宅建業法でも「従業員5名につき1名以上の宅地建物取引士を設置すること」とされているので、非常に重要な資格者であることがわかるでしょう。

 

建設業界で宅地建物取引士のニーズが高い理由

一方、建設業界においても宅建士のニーズは非常に高まっています。不動産業界に宅建士が不可欠であることはわかりますが、なぜ建設業界からも求められているのでしょうか。それは、建設業が取り扱う完成物である「不動産物件」の取引を行うために宅建士を置く必要があるからです

 

土木工事を専門とする会社や電気工事を専門とする会社など、建設業にはさまざまな専門家が関わっていきます。しかし、大手あるいは力のある中小企業などでは、宅建士を雇うことにより、建築から不動産取引にいたるまで一貫した業務を手がけるところがあるのも事実です。

 

建設業は専門家が集まってひとつの不動産を作り上げていきますので、できあがったものを取り扱うには宅地建物取引士の存在が欠かせません。このような背景から、一貫した建設業務を行おうとする会社が「自社で宅地建物取引士を雇いたい」と考えるのも自然なことでしょう。

 

建築から不動産取引まで行うには宅地建物取引士が不可欠

建設業は、単独では完成した建物を販売することができません。施主からの依頼を受けて初めて、新築工事やリフォームなどを行うことができるのです。

 

しかし、宅地建物取引士がいる場合はどうでしょうか。宅地建物取引士がいれば自社に不動産取引部門を設置できるので、自社で土地を購入して建物を建て販売するまでの一連の業務を行うことが可能です。あるいは、中古の建物をリノベーションして売買することもできるでしょう。宅地建物取引士がいることで、会社としての業務範囲が非常に広くなり新規事業を展開していくことも可能になります。

 

  • 自社で不動産取引を行うことができる
  • 施工能力をアップさせ新たな事業を展開できる
  • ワンストップのサービスが可能なため依頼が増える可能性がある

 

このように、宅地建物取引士を雇うことによる建設会社のメリットはとても大きいことから、近年ますます宅地建物取引士のニーズが高くなっているのです。

 

まとめ

建設業界における宅建士のニーズが高くなる理由について説明してきました。「不動産部門を持つ」という新たな分野開拓ができることからも、可能であれば宅地建物取引士を雇ったり従業員に資格を取らせたりすると、今後の事業展開にも広がりが出てくることでしょう。

 

当事務所でも、会社設立における建設業許可のサポートをしておりますが、近年では宅地建物取引士の資格を取るべきかという質問もいただくようになりましたご相談者様の現状をよくヒアリングしたうえで適切な助言を行いますので、まずはお気軽にお問い合わせください