経営事項審査は公共工事の入札権利を取得するためにも大変重要なものですが、なかには虚偽の申請を行う事業者が存在することも事実です。ここでは、北海道の建設業者が経営事項審査で虚偽申請を行った場合の処分について説明していきます。
国土交通省の虚偽申請防止対策
経営事項審査とは、国や自治体が発注する公共工事についてその入札権利を得るための重要な手続きです。事業者・会社に関する様々な要素が数値化され、入札資格を与えても良いか評価を行うのです。
建設業者にとって公共工事を受注できるかどうかは大きなポイントであり、できるだけ高い数値を出して評価を得られるよう望むのも自然なことでしょう。しかし、高い評価を得るために虚偽の申告を行うことは明らかな不正ですから、厳しい処分を行う必要があります。
国土交通省によるチェック体制
国土交通省では虚偽申請防止対策を強化し、以下のようなチェックを行っています。
1.登録分析機関に申請提出された財務諸表のチェック
形式不備や異常値など確認基準に基づく確認を行います。このチェックをクリアした場合は申請が進み経営状況分析結果が申請者に通知されます。チェックをクリアできなかった場合は、次の確認作業に移行します。
2.疑義が生じた項目に関する再確認
財務諸表に疑義が生じた場合、申請者から意見を聴取したり追加書類の提出を求めたりして、財務諸表の信ぴょう性を確認します。修正が必要とされた場合は、修正を行った財務諸表を登録分析機関に再提出することになります。
再確認を受けた結果、問題がないと判断されれば、申請者に経営状況分析結果が通知されます。修正を行ってもまだ疑義が残ると判断された場合は、次の確認作業に移行します。
3.異常値が認められる申請の絞り込み
極端な異常値が認められる申請を絞り込むために、報告基準による確認が行われます。確認の結果、問題がなければ審査行政庁に情報提供はされません。問題があると認められた場合は次の段階に移行します。
4.審査行政庁に申請者情報を提供
報告基準による確認をクリアできなかった申請者について、審査行政庁に情報提供が行われます。審査行政庁はこの情報をもとに、書類原本の確認や立ち入り検査などを行う「重点審査対象企業」として選定するかどうかを判断することになります。
疑義チェックの抽出基準
このような流れで疑義チェックが行われていますが、具体的には企業に以下の傾向がないかを判断し抽出しているとされています。
- 前年度に比べて勘定科目の数値差が大きく開いている
- 未成工事に関する金銭の出入りが多すぎる
- 利益額が頻繁に増減している
- 雑収益などが大きすぎる など
これらの傾向が見られた場合、不自然であるとして、より具体的な内容が精査されることになるのです。
北海道における虚偽申請処分
北海道開発局ホームページによれば、虚偽申請に対し次の処分を行うとしています。虚偽申請は「請負契約に関する不誠実な行為」に該当しますから、その処分が厳しくなることは避けられません。
- 公共工事の般競争および指名競争に関して、入札前の調査資料に虚偽の記載を行うなど不正な行為が認められた場合、15日以上の営業停止処分
- 虚偽申請により経営状況分析結果を取得し、これをもって公共事業の資格審査が行われた場合、30日以上の営業停止処分
- この場合、平成20年国土交通省告示第85号第一の四の5の(一)に定められた監査の受審状況において加点され、かつ、監査の受審の対象となった計算書類、財務諸表等の内容に虚偽があった場合は45日以上の営業停止処分
先に述べた異常値の傾向について、審査行政庁は分析の見直しおよび強化に取り組んでいます。経営状況に問題がない場合は正しく申請を行い、力不足である場合は地道な業績向上を目指してから申請に臨むことがとても大切です。
まとめ
経営事項審査は毎年行われるものであるため、慣れが生じてしまった結果「これくらいなら大丈夫だろう」と虚偽の申請に繋がることがあります。しかし、審査行政庁は経営状況分析機関との連携を強め、虚偽申請防止の取り組みを積極的に行っていますので、必要書類には正確な情報を記載し虚偽申請を行わないよう、細心の注意を払いましょう。
気のゆるみから来る虚偽申請を自ら抑止するためには、定期的に専門家に相談し書類のチェックを受けたり助言を求めたりすることも有効です。当事務所では無料相談を設けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。