建設業許可は29種類に分けられており、「建築一式工事」もその1つです。ここでは、建築一式工事の概要と取得要件について説明していきます。
「建築一式工事」とは建設における総合ジャンル
建築一式工事は29種類の建設業許可の1つですが、大工工事や内装工事など細分化された許可とは異なり、建築物を建設するために必要な総合力が求められるものです。具体的には以下のような特徴を備えています。
- 建築一式工事例:戸建新築工事・ビル新築工事・建築確認が必要な増改築工事など
- 建築物の建設における企画・指導・調整業務を含む
建築一式工事とは大規模かつ複雑な工事のことを意味しており、通常は、受注した工事について元請業者となり、大工工事や内装工事など分野ごとに下請業者への施行発注を行うものです。
建築一式工事許可はどんな工事も請負可能なのか
よくある誤解として知られているのが、「建築一式工事業許可を持っているからといってすべての工事を請け負えるわけではない」ということです。建築一式工事業許可により可能なのは「建築確認を要する工事を受注して元請業者となり、各下請業者に分散発注すること」ですから、どのような工事でも請け負うことができる許可という意味ではありません。
したがって、建築一式工事業許可を取得した業者であっても、500万円以上の内装工事を受注するためには内装工事業許可を別途取得しなければいけませんし、あくまでもその工事の性質に合わせた許可が必要になることには変わりないのです。
建築一式工事業許可を取得するための要件
建築一式工事業許可を取得するためには、次の要件を満たしていることが求められます。
1.経営業務の管理責任者の配置
個人事業主の場合は本人または支配人のうち1人が、法人の場合は常勤役員のうち1人が、5年または6年以上の経営業務の管理責任者経験やこれに準ずる補佐経験を持っていることが求められています。
2.各営業所における専任技術者の設置
許可を得ようとしている建設業に係る建設工事の専門知識を持つ常勤専任技術者を置かなければなりません。専任技術者として認められる者には一定の要件が求められ、要件は許可業種により異なります。
たとえば一般建設業許可を取得しようとする場合、専任技術者は次のいずれかに該当している必要があります。
- 指定学科(許可を得ようとしている建設工事ごとに指定された学科)を修了した高卒後5年以上もしくは大卒後3年以上の実務経験を持つ者
- 指定学科(許可を得ようとしている建設工事ごとに指定された学科)を終了した専門学校卒業後5年以上の実務経験を持つ者または3年以上の実務経験に加え専門士もしくは高度専門士を称する者
- 許可を得ようとしている建設工事について10年以上の実務経験を持つ者
- 国家資格者か複数業種に係る実務経験を持つ者
3.財産的基礎
建設工事を行うためには、資材や機械器具などを購入したり労働者を確保したりするなど、ある程度の資金力を備えている必要があります。そこで建設業法では、建設業における建設工事の許可を得ようとする者について、財産的基礎や金銭的信用があることを要件に挙げています。求められる財産的基礎は「一般建設業許可」と「特定建設業許可」では異なっており、それぞれ次のように指定されています。
【一般建設業許可を取得しようとする場合】※以下いずれかに該当すること
- 自己資本が500万円以上ある
- 500万円以上の資金調達能力がある
- 許可申請直前の過去5年間に許可を受けて継続して営業を行った実績がある
【特定建設業許可を取得しようとする場合】※以下すべてに該当すること
- 欠損の額が資本金の20%を超えない
- 流動比率が75%以上である
- 資本金の額が2,000万円以上
- 自己資本の額が4,000万円以上
4.欠格要件への非該当
建築一式工事の建設業許可を取得しようとする場合、次に挙げるような欠格要件に該当しないことが求められます。個人事業主の場合は本人や支配人、支店長や営業所長など、法人の場合は役員が対象になります。
【欠格要件】
- 破産者で復権を得ない者
- 不正な手段で許可を受けこれを取り消されてから5年を経過しない者
- 許可の取り消しを逃れるため廃業届を出してから5年を経過しない者
- 建設業法に違反して許可を取り消され営業停止期間が経過しない者
- 禁錮以上の刑の執行が終わるか刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 など
5.適切な社会保険の加入
建設業で加入が求められているのは次の3つです。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
ただし、従業員5名以下の個人事業主については、健康保険と厚生年金保険の適用が除外されるので、国民健康保険加入の状態で許可申請が可能です。
まとめ
建築一式工事の許可を得るためには、すべての要件を満たさなければなりません。ただし、一般建設業許可と特定建設業許可では要件の内容が異なりますので注意しましょう。
当事務所では建設業許可申請に関するご相談・ご依頼を数多くお受けしております。無料相談もご用意しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。