宅建といえば、毎年非常に多くの人が受験する国家資格で、合格すると宅地建物取引士となることができます。建築業におけるニーズが高いのも注目すべき点でしょう。ここでは、宅建士の業務と試験概要について説明していきます

 

宅地建物取引士の業務

毎年約20万人が受験するといわれる国家資格の宅地建物取引士は、不動産業における重要業務を担っていることで知られています。たとえば不動産の賃貸契約や売買契約の際に、以下のような説明を行うのは宅建士の主な独占業務です。

 

宅建士の主な業務

不動産に関する以下の情報などについて、顧客に対し説明することができます。これを重要事項説明といい、不動産取引では欠かせない業務となっています。

  • 不動産の登記情報
  • 不動産の広さ
  • 水道・ガス・電気など施設
  • キャンセル事項の説明
  • その他重要事項の説明

 

不動産業を営む場合、従業員5名に対し宅地建物取引士1名以上の設置が義務づけられています。

 

建築業界における宅建士のニーズ

宅建士は主に不動産業界で活躍する士業ですが、建築会社におけるニーズも非常に高まっています。たとえば、建築会社が建てた家を顧客に引き渡す際、不動産の取り扱い部分を自社の宅建士に任せればワンストップのサービスを提供することができるからです。

 

自社で一貫した不動産契約を請け負うことができれば、業務のスピード面でも社内の情報共有面でも非常にスムーズになり、自社にとっても顧客にとっても大きなメリットになるでしょう。

 

宅地建物取引士の試験概要

宅地建物取引士の試験は、国土交通省の定めに基づき都道府県知事が実施します。実際には、国土交通省指定の一般財団法人不動産適正取引推進機構が全都道府県知事の委任のもとに試験を実施しています。

 

試験の内容

試験内容や方法などについては、宅地建物取引業法施行規則の第7条以下に定められており、宅地建物取引業の実用的知識を有しているかどうかが問われます。試験内容は細かく指定されていますが、おおむね以下の通りです。

 

第八条 前条の基準によつて試験すべき事項は、おおむね次のとおりである。

一 土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。

二 土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。

三 土地及び建物についての法令上の制限に関すること。

四 宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。

五 宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。

六 宅地及び建物の価格の評定に関すること。

七 宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること。

※宅地建物取引業法施行規則参照

 

なお、国土交通大臣の登録を受けた者(登録講習機関)により実施される講習を修了し試験に合格すると、その日から3年以内に限り前述の一号および五号の試験が免除されます

 

試験方法

全50問について四肢択一式による筆記試験を行います。ただし、前述の登録講習修了者は、一部の試験が免除されるので合計45問です。

 

受験資格

年齢や性別、学歴などに制約はなく誰でも受験することができます。なお、宅地建物取引業法第18条「宅地建物取引士の登録」に記載されている欠格事由に該当しないことが条件です。

 

試験地・試験日・受験手数料

原則として居住する都道府県において受験します。試験日は毎年10月第3日曜日の年1回ですので、見逃しのないよう注意しましょう。受験料は8,200円です。

 

不動産適正取引推進機構が公開している「試験実施概況(過去10年間)」を見ると、合格率の平均や推移を確認することができます。たとえば、令和元年度から令和3年度10月試験までの合格率は13.1%から17.9%の間で推移しており、このことから宅地建物取引士の試験難易度は高いことがわかります。事前にしっかりと準備をして試験に臨む必要があるでしょう。

 

まとめ

建設業界では宅建士のニーズが高くなっていますが、その理由のひとつが「不動産取引から建築まで一貫して受注できる」という点にあります。不動産取引部分を他社に依存することなく自社で完結できる点は大きなメリットとだといえるでしょう

 

当事務所では、建築会社設立関連業務のご依頼を数多くいただいていますが、前述の理由から宅建士の取得あるいは宅建業の立ち上げについてのご相談も増えてまいりました。建築業界と宅建士は非常に相性がいい組み合わせでもありますので、「建築会社設立と同時に宅建士を取得したい」などご質問や疑問などがありましたら、ぜひ当事務所までご相談ください