宅地建物取引士といえば、不動産会社で不動産取引を行うために取得する人が大勢を占める国家資格です。ここでは、宅建士の資格を持つことで可能になる業務や資格が活きる業界について説明していきます

 

宅地建物取引士の独占業務

宅地建物取引士不動産取引に関する国家資格で、3つの独占業務を行うことができます。

 

重要事項説明

貸主と借主または売主と買主の間で交わされる賃貸契約や不動産売買契約では、以後のトラブル防止を目的として、有資格者が重要事項を顧客に説明することになっています。これを重要事項説明といい、宅地建物取引士の資格を持つ者だけが行うことができるものです

 

宅地建物取引士は宅地建物取引士証を提示したうえで、口頭で重要事項について説明し顧客の理解と合意を得ます。なお、重要事項とは以下のものを指しています。

  • 不動産の所在地
  • 売主(貸主)の氏名および連絡先
  • 買主(借主)の氏名及び連絡先
  • 建物の用途と制限
  • 水道高熱設備の状況 など

 

重要事項説明書への署名捺印

前述の重要事項を顧客に伝えたことの証明として、宅地建物取引士は責任者として署名捺印を行います

 

契約書への署名捺印

重要事項説明書の説明を経て取引成立にいたったとき、契約書面を作成することになります。宅地建物取引士は契約書の内容をよく確認し、その証明として署名捺印しなければなりません

 

これら3つの業務は「宅建士の独占業務」である分、宅建士は慎重かつ丁寧に説明事項を確認し、顧客に「わかるように」説明する必要があります。当然ながら大きな責任を伴う立場となりますので、それに応えられるだけの経験を積むことが大切になってくるでしょう。

 

また、宅建士の資格取得に際しては、契約に関わる一部の法律(民法)も学ばなくてはならないため、この先何らかのトラブルが起きた際にも適切に対応することができます。

 

宅建士の資格が活きる業界

宅地建物取引士の資格を活かすことができるのは不動産業界だけではありません。業務上、不動産を取り扱うさまざまな業界で宅建士としての知識や資格が役立つため、転職や独立などを考えるときも可能性が広がります。

建設業界

建設業は建物を建設するのが主な業務ですが、会社の成長に伴って自社建築の建物を販売する不動産部門を強化する場合があります。自ら建てた建物の販売を別会社に委託することなく自社で管理・取引することが可能になるので、利益の面でも有利になるのです。こういった場合、社内に宅地建物取引士の有資格者を配置する必要があることから、建設業界ではある程度安定的に宅建士のニーズが存在するといってもいいでしょう。

 

金融業界

金融機関では、担保として不動産を取り扱う機会が非常に多いことから、不動産に関する適切な知識・経験・鑑定力を備えた宅地建物取引士の有資格者が求められています

 

企業の財務担当

企業の財務担当者に宅地建物取引士を配置するケースも少なくありません。会社が運用する不動産のクオリティや市場動向などは、企業の経営や成長を大きく左右する要素でもあるため、宅地建物取引士による専門的な鑑定や助言が非常に役立つのです。

 

まとめ

宅地建物取引士の資格を持っていることで、不動産業界に留まらず幅広い活躍の可能性を得られることがわかります。特に宅建士と建設業界・金融業界との相性は非常に良いため、不動産業界で一定程度の経験を積んだら建設業界や金融業界などでより力を発揮していく、という将来設計も描けそうです。

 

当事務所でも、建設業界における宅地建物取引士のニーズを強く実感しております。不動産業界だけではなく、建設会社で宅建士を配置したいケースについても、早い段階で社員に宅地建物取引士の資格取得を積極的に促していくことが重要になるでしょう。