元請業者から、建設業許可をできるだけ早く取得するよう求められている下請業者は少なくないでしょう。ここでは、下請業者でも建設業許可を取得すべき理由とメリットについて説明していきます。
元請け人と下請け人の違い
工事請負の一般的な仕組みとして、「発注者→元請業者→下請業者」という関係図を覚えておきましょう。元請業者は工事内容に応じて1つから複数の下請業者に発注をかけ、業務を分担していきます。
元請業者を「元請負人」、下請け業者を「下請負人」に置き換えたとき、建設業法第2条第5項に基づく次の定義が当てはまることになります。
- 「発注者」建設工事を注文する者
- 「元請負人」下請契約における注文者で建設業者である者
- 「下請負人」下請契約における請負人である者
※「下請契約」とは、建設工事を請け負った建設業者が他の建設業者との間で結ぶ請負契約のことを指しています。
下請業者にも建設業許可は必要なのか
通常、建設業を営もうとする場合、都道府県知事許可(北海道の場合は北海道知事許可)または国土交通大臣許可を受けなければなりません。
そもそも建設業許可には、元請業者が取得すべき許可区分として「一般」と「特定」の二種類があり、それぞれ以下のように異なっています。
【一般建設業許可】
金額の制限なく、許可を持つ業種のすべての建設工事を受注することが可能。
【特定建設業許可】
発注者から大規模工事の直接受注を得ることが可能。
下請業者については、請負金額により建設業許可が不要(軽微な工事)か、あるいは一般建設業許可を取得すれば事足ります。もし特定建設業許可を取得した場合は、元請業者となることができ、総額4,000万円以上の工事あるいは総額6,000万円以上の建築一式工事を下請に出すことができるようになるのです。
では、建設業許可が不要とされる「軽微な工事」とはどのようなものなのでしょうか。下請業者として活動する場合は、軽微な工事の概要を知っておくことはもちろん、建設業許可を取得した方がいい理由も見据えておくといいでしょう。
「軽微な工事」とは
建設業法施行令第1条の2には、「軽微な工事」に該当する工事ついて以下のように記されています。
- 建築一式工事については、1件あたり請負代金が税込1,500万円未満の工事または請負代金の額を問わず延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
- 建築一式工事以外については、1件あたり請負代金が税込500万円未満の工事
よって上記「軽微な工事」は建設業許可を取得する必要がありませんが、上記以外の工事をする場合、建設業許可が必要となります。したがって、軽微な工事のみを受注する下請業者となる場合は建設業許可を取得する必要はないことになります。しかし、必ずしも500万円未満の工事だけ途切れなく発注されるとは限らないため、できるだけ許可は取得しておいた方がいいでしょう。
なお、軽微な工事の基準となる金額「500万円」について、以下のポイントを必ず理解しておかなければなりません。
- 500万円は税込金額であること
- 材料が支給された場合はその材料費を加算して500万円未満であること
- 一つの工事を分割して請け負う場合は各請負契約代金の総額が500万円未満であること
下請業者が建設業許可を取得すべき理由
500万円未満の工事のみ受注するのであれば、建設業許可を取得せずとも下請業者になることは理論上可能です。ただし、建設業許可を取得することで次に挙げるようなメリットを享受することができるため、できるだけ積極的に許可取得を検討することをお勧めします。
建設業許可を取得するメリット
建設業許可を取得していない場合、受注できる工事は総額500万円未満のものに限られます。建設業許可を取得していれば、金額の制限なく幅広く建設工事を受注できるようになるため、売上増加が期待できるでしょう。
事業者としての信用が高まる
建設業許可を取得するためには、法に定められた厳しい要件を満たしていなければなりません。許可を持っていれば、工事経験や財産的要素、専門的技術の高さなどを対外的に知らしめることになり、対外的な信用度が高くなります。元請業者としても、建設業許可を取得している下請業者の方が安心して仕事を依頼しやすいといえるでしょう。
まとめ
軽微な工事しか受注しないから建設業許可を取得しない、という選択肢もありますが、事業主・企業として受注件数や売上をアップさせたいと考えているのであれば、積極的に建設業許可の取得を検討した方がいいといえます。設業許可を持つ業者として有利になる場面が増えることが想定されるからです。
許可申請のためにはいくつもの要件をクリアする必要がありますし、たくさんの必要書類を集めて提出する手間もかかりますが、専門家の手を上手に借りて建設業許可取得を目指すことをお勧めします。
当事務所では建設業許可申請について豊富な経験を有していますので、ご不安なことやご不明なことなどがありましたら、ぜひ無料相談でお問い合わせください。