常勤役員等(経営業務管理責任者等)の対象者とは

常勤役員等(経営業務管理責任者等)とは「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者」とされています。建設業許可を取得するためには常勤役員等(経営業務管理責任者等)を必ず置かなくてはなりません。常勤役員等(経営管理責任者等)となるには、一定以上の経営経験を有する方が営業所に常勤である必要があります。取締役は平役員で構いません。

 

常勤役員等(経営業務管理責任者等)に必要な経営経験とは

経営経験とは、建設業を営む会社で常勤の役員等(株式会社・有限会社などの取締役、合同・合名・合資会社などの持分会社の業務執行社員、法人格のある組合等の理事等、個人事業主、支配人)や、執行役員(委員会等設置会社の執行役)、営業所長や支店長などの建設業経営業務に関して総合的な業務管理経験のことをいいます。いわゆる建設業務のマネージメント全般の管理者としての地位がここでの経営経験と言ってもよいでしょう。なお、ここでいう取締役は代表権のない取締役でも構いません。つまり平の取締役でもよいということです。

 

常勤役員等には、監査役・監事、会計参与は含まれません。また、執行役員の中でも、委員会等設置会社ではなく、建設部門に関係しない執行役員は含まれません。ここでの常勤役員等に含まれる執行役員は、取締役会や株主総会等の決議により選任されたことを要します。

常勤役員等(経営業務管理責任者等)に必要な経営経験年数

<① 基本的なパターン 申請者の9割以上がこのパターンに該当します。>

この経営経験が建設業許可29業種のいずれかにおいて5年以上(建設業の中のどんな業種であっても通算で5年あればOKです)であることが必要です。

 

北海道石狩振興局管内での申請の場合(本記事執筆の令和3年6月21日時点)、この5年の経験資料としては、建設業に関わる請求書・注文書などでの経験資料(通算での経験の見方は、最低でも6か月に1回程度の資料がなければ通算でのカウントができません。例えば、1月に工事実績があり、その次の工事実績が5ヶ月空いた後の7月の工事実績を提供する場合、通算で1月から7月までの7ヶ月を経験で見てくれます。1月の工事実績の後、次の実績が8月のような場合は、中抜け期間が6ヶ月あるため、この場合は1月と8月の2ヶ月しか経験としてみてくれません。更にこれとは別に、請負工事代金の入金確認資料(通帳の入金箇所の提示など)が必要となります。常勤役員等の確認は、会社登記簿や確定申告書をもって確認します。また、略歴書、社会保険の加入状況も常勤性判断の基礎資料となっています。

 


<例外的パターン ②準ずる地位5年 ③準ずる地位にあり経営業務管理責任者を補助した経験6年>

①の取締役もしくは執行役員・営業所長や支店長でなくても、②建設業に関し、副支店長や部長クラスでの地位で経営業務の管理責任者に準ずる地位とされるケースもあります。このケースでもその地位に基づき5年以上の経験があれば、ここでいう、常勤役員等となることができます。なお、令和2年9月30日以前(改正法施行前)に建設業法上の経営業務管理責任者に就任していた者は、令和2年10月1日以降は原則、この②の地位に該当することになります。

 

また、③建設業に関し、②の準ずる地位を持ったものが経営業務管理責任者を補助した経験として6年以上の経験があれば、この者も常勤役員等に含めることができます。

 

②と③での建設業許可申請は、登記等の明確にわかる経験資料がないため、その経験を証明するハードルが高く、例外的な申請パターンと言えます。自己の判断で「私は役員に準ずる地位にあった」と思っていても、「役員に次ぐ職制上の地位」「特定の事業部門が建設業に関するものであって、その業務執行権限があること」「取締役会等からの具体的な権限移譲(建設部門に関して)と、代表取締役からの指揮命令および業務執行に専念していたこと」など、立証のハードルは極めて高いのです。申請時点で立証書類の作成をするのはかなりグレーとも言えますので、事実上、申請時点で立証書類がすべてそろっているケースしかこのパターンでの申請はできないものと思ったほうがよいです。

 

常勤役員等を直接に補佐する者を加えて申請するケース

建設業で常勤役員等として5年ないし6年の経営経験がなくても経営管理責任者等になることができる場合があります。令和2年10月の建設業法改正により、建設業許可申請上の要件が緩和されました。以下、国土交通省のホームページより引用します。これは「常勤役員等」と「その者を補佐する経験者」の最低2名選任が必要になります。このパターンも例外パターンと言え、建設業許可申請上はハードルが高いと言えます。当社の考えとしては、「要件緩和はされたが、この申請パターンはレアケースとして、原則とおり、5年の建設業役員経験での申請を原則的に行う」こととしています。

 

  1. 建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有しかつ五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者に加えて常勤役員等を直接に補佐する者として、当該建設業者又は建設業を営む者において「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」について、5年以上の経験を有する者をそれぞれ置く(一人が複数の経験を兼ねることが可能)ものであること。

  2. 五年以上役員等としての経験を有し、かつ建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者に加えて常勤役員等を直接に補佐する者として、当該建設業者又は建設業を営む者において「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」について、5年以上の経験を有する者をそれぞれ置く(一人が複数の経験を兼ねることが可能)ものであること。

     

    と、条文(建設業法施行規則)が読みづらくなっています。表でまとめると以下のようになります。

     

    常勤役員等についての必要な経験
    常勤役員等について職制上直属直下の地位にある補佐者(※申請会社での経験が必要であり、申請会社以外の経験は使えません。補佐者は1名~3名のパターンがあります。)
    建設業の役員等として2年以上の経験+左の経験を含め、建設業についての財務・労務・業務運営いずれかについて役員等または役員等に次ぐ職制上の地位にあって5年以上の経験があること 建設業の財務管理・労務管理・業務運営のすべてに関し5年以上の経験を有する補佐者(一人の者が財務・労務・業務運営の経験を兼務することは可能です。しかし、経営業務管理責任者との兼務はできません。この経験を積んだ当時の地位は役員等の直属でなくてもOK→裏を返せば、申請時点では直属の地位である必要がある。)
    建設業の役員等として2年以上の経験+左の経験を含め役員等として5年以上の経験があること

     

    この場合の常勤役員等をまとめると、建設業で最低2年の役員経験は最低必要になります。あとは建設業に関する経験での「次ぐ地位」にあるとか、建設業に関しなくても役員等の経験があるかによって判断することになります。この常勤役員等に関して、直属の部下ともいえる上記要件に該当する補佐者を置くことによって、建設業許可上の常勤役員等の要件を満たすことができます。